第7回定期演奏会 楽曲紹介

E. フンバーディンク(Engelbert Humperdinck, 1854–1921)

19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したドイツの作曲家。ケルン近郊に生まれ、若くして作曲の才能を認められ、ケルン音楽院およびミュンヘンで音楽を学んだ。青年期にはワーグナーと親交を結び、《パルジファル》初演の準備にも関わるなど、その音楽語法はワーグナーの強い影響を受けている。

一方で、フンバーディンクの音楽は、民謡風の親しみやすい旋律や明快な和声感を特徴とし、重厚なワーグナー楽派とは一線を画す独自の作風を築いた。代表作である歌劇《ヘンゼルとグレーテル》は、1893年の初演以来、現在に至るまで世界各地で上演され続けており、フンバーディンクの名を不動のものとした。

歌劇《ヘンゼルとグレーテル》前奏曲

この前奏曲は、グリム童話を題材とした歌劇《ヘンゼルとグレーテル》(1893年初演)の幕開けを飾る管弦楽曲である。オペラ全体を通して重要な役割を果たす動機が凝縮されており、作品の世界観を端的に提示する導入部となっている。

冒頭では、コラール風の厳かな主題が弦楽器によって静かに奏でられ、幻想的な雰囲気が醸し出される。その後、やさしく親しみやすいメロディが現れ、森の中の風景や、ヘンゼルとグレーテルの無邪気な姿を思わせる音楽が続く。

全体としてはワーグナー的な重厚な和声と管弦楽法を基盤としながらも、旋律の親しみやすさと透明感が際立っており、童話オペラならではの柔らかさが感じられる。オペラ本編への期待を自然に高める前奏曲として、高く評価されている。


C. サン=サーンス(Camille Saint-Saëns, 1835–1921)

19世紀フランスを代表する作曲家・オルガニスト・ピアニスト。パリに生まれ、幼少期から神童として知られ、わずか10歳で公開演奏会を開いた。パリ音楽院で学び、卓越した音楽理論の知識と演奏技術を身につけた。

古典的な形式美を重んじる一方で、管弦楽法の巧みさや色彩感覚にも優れ、交響曲、協奏曲、室内楽、オペラなど幅広い分野で多くの作品を残した。フランス音楽の国際的評価を高めた功績は大きく、後のフォーレやドビュッシーらに道を開いた存在でもある。

アルジェリア組曲 作品60

《アルジェリア組曲》は、サン=サーンスが1880年に作曲した4曲からなる管弦楽組曲で、作曲者が滞在した北アフリカ・アルジェリアでの体験や印象をもとにしている。19世紀後半のフランス音楽に特徴的な異国趣味(オリエンタリズム)を色濃く反映した作品である。

各楽章では、壮麗な序奏、瞑想的な旋律、舞曲的なリズムなどが次々と現れ、多彩な情景が描き出される。旋律やリズムには直接的な民謡引用こそ少ないものの、音の並び方や独特のリズムによって、異国の空気感が巧みに表現されている。

サン=サーンス特有の明快な構成と洗練された管弦楽法と異国情緒が見事に融合した作品となっており、演奏会用管弦楽曲として現在も親しまれている。

交響曲第3番 ハ短調 作品78《オルガン付き》

この交響曲は1886年に作曲され、ロンドン・フィルハーモニック協会から依頼されて生まれた作品である。サン=サーンス最後の交響曲であり、作曲家自身の交響曲創作の集大成ともいえる作品である。師であり親友でもあったフランツ・リストに献呈され、初演の翌年にリストが世を去ったこともあり、結果的に一種の追悼的性格を帯びる作品ともなった。

本作の最大の特徴は、オーケストラにオルガンとピアノ連弾を加えた独創的な編成にある。ただし、オルガンは独奏楽器として前面に出るのではなく、オーケストラの響きを拡張・補強する存在として用いられており、特に終楽章において圧倒的な効果を発揮する。ピアノ連弾もまた技巧的な独奏ではなく、リズムや音響の推進力を担う役割を果たしている。

形式面では、4楽章構成を基礎としながらも、第1・第2楽章、第3・第4楽章をそれぞれ連続して演奏する2部構成が採られている。また、循環形式で冒頭に現れる主題が姿を変えながら全曲を貫き、終楽章で壮大に回帰する点も大きな特徴である。

第1部では、暗く緊張した雰囲気の音楽が続き、考え込むような重い印象を与える。第2部に入ると、性格は一転し、終楽章ではオルガンの荘厳な和音とともにハ長調の輝かしい主題が現れる。この長調への転換は、苦悩から克服、あるいは精神的昇華を象徴するものとも解釈されており、作品全体に強い達成感を与えている。

重厚な構築力と華麗な音響効果を兼ね備えたこの交響曲は、フランス交響曲の到達点として高く評価されると同時に、演奏会の掉尾を飾るにふさわしい壮大な作品である。

KプレミアムOBオーケストラ

慶應義塾大学公認団体「Kプレミアムオーケストラ」創立10周年の節目に、その卒業生により結成されたオーケストラ団体です。